コミュニケーション能力がある人は面接官に向かない

コミュニケーション能力ってなんでしょうね。色々な切り口があると思いますが、会話力とか雑談力というなら、自分はそこそこあるほうだと思います。だから、職場で面接を担当することになったときに、リラックスした相手から多くの情報を引き出すことができて、判断に有利なのではないかと思っていましたが、今思えば、それは全く逆だったと思います。

 

初対面の人とすぐに打ち解けて、難なく親しみのある会話ができることをコミュニケーション能力と仮に呼ぶとすると、面接官にコミュニケーション能力がある場合は、「普通はNGでしょ?」と思う人からでも、笑顔や共感のある発言や説得力のあるトークをつい引き出してしまい、相手の短所に気づけないことが多いんです。

 

また、コミュニケーション能力があるということは、類推力や連想力や相手の気持ちを察するチカラがある、ということだと思うのですが、それがあると、変なことでも変と思わず、おかしいこともおかしいと思わないんですよね。

 

例えば、かつて面接のときに応募の動機を尋ねたら、(なんでそんなこと聞くの?)という憮然とした表情で「えっ・・・就活ですから(だからなに?と言いたげ)」と答えた若者がいました。

 

私はその言葉に特に腹も立たず、(確かにそりゃ当然だ(笑))と思い、つくったり飾ったりしないストレートな若者らしさを感じたのですが、この人は大失敗でした。職場に入れて気が付きましたが、この人はアスペ君でした。コートを着たままオフィスに入ってきたり、まだ仕事に入ることができない新人で、業務研修の真っ最中なのに、暇さえあれば堂々と某国家資格のテキストを読んでいたり、自分が今周囲から何を期待されているか(どう振舞えば皆が納得するか?)ということを察知する行動が全くできない人でした。

 

考えてみれば、面接と言うのは自分が選ばれる場なのですから、少しでも自分をよく見せたいのが人情だと思います。そこまで行かなくても、面接は(どう答えたらどう思ってもらえるか?)といった心理戦でもあり、志望の動機を聞かれたら、それなりにまっとうな回答をするのが普通ではないかと思います。いつでも”普通”がいいとは限りませんが、うちの職場はお客様とお話をする仕事なので、あまり個性的な人は困るんですよね。

 

ですが私は、そのときの憮然としてそっけない受け答えを「若者らしさ」と捉えてしまったし、その後の会話ですぐに打ち解けて短い時間ながら心の交流が図れたので、決して悪い人とは思わなかったし、素朴でピュアな人だと思いました。”素朴でピュア”は間違いではありませんでしたが、”素朴でピュア”の度合いが強すぎて(汗)、周囲が望む行動が職場ではできなかったし、お客様の知りたいことを的確にこたえることもできませんでした。

 

また、こちらと重複しますが、ある人は、技術的な知識が必要な仕事であるため、採用者を集めた簡単な説明会のときに、ボストンバッグに「昨日古本屋で買った」という専門書を20冊近く詰め込んで持って来ました。どれもこれも私が見てもよくわからない学術的なものだったため、「この中から事前にどれを勉強したらいいですか?」と聞かれて戸惑いました。本当はこの時点で、この人、ちょっと変わっているな?と気づくべきなんです。(まぁ、このときは、ここで気が付いても、すでに採用を決めてしまっていたのでどうにもならなかったと思いますが・・・)

 

ですが私は、たとえ方向性がとんでもなく違っていても、やる気はやる気だし、新しい仕事に当たって自腹を切って古本を買い集め、ぜひとも勉強したいという彼のひたむきな姿勢に好感を持ち、「いいね~。やる気あるね~」とホメはしましたが、明確な指摘はしませんでした。彼も案の定アスペ君で、職場に入れた翌日あたりから、既存スタッフからすぐにブーイングがあがるぐらいだったのですが、私とは特に気になる齟齬もなく普通にストレスなくコミュニケーションができるので、私はこの時点でも、「変わった人」という感覚はなかったんですよね。

 

そんな風に、普通は気になるようなことでも、「これこれこういう気持ちだからこういう言動になるんだな」などと、すぐに思いつく正確だったりすると、基本的に他人には寛容で許容範囲も非常に広くなってしまうので、本来あるはずの注意すべき点にもなかなか気が付かなかったりするんですよね。

 

これらはほんの一例で、ほかにも、人選に失敗したとわかったあとで、「あぁ、思い返せばあのとき(面接時)に、NGのヒントは確かにあった」と思うことが多すぎて、私はすっかり、人を見る目に自信を失ってしまいました。普通ははじくはずの、問題がありそうな人を、逆に通してしまうのですから、普通以下ですよね。

 

また、お話をしてみて、私が現場で育てていけるだろうと思っても、それは私だから思うことで、その人を現場のスタッフに預けても、お手上げになってしまうことが非常に多く、その点でも自分とスタッフの間の何かの大きな差を感じました。

 

ですが、無難でそつがない人だけを選んでいると、今度はリーダーが育ちません。リーダーになれる資質がある人と言うのは、ある程度個性的なところがありますし、また、入社当時は少し我が強かったり不満が多かったり、どこかにバランスの悪さを持つ人が多いんです。それはそれで一筋縄ではいかないところがあるため、この場合も人によっては既存スタッフと軋轢を生むことがありますが、既存スタッフはアスペ君とリーダー資質の差を見抜けないので、一様に文句を言ってきます。

 

その間に入って適度になだめ、自分が見込んだ新人さんには、うまく職場に馴染むように仕向けるのも、自分の仕事の一つだったと思います。そっちは得意なんですけどねぇ・・・その前に、変な人を入れない。もとい、「変」でもいいけど、お客様対応に向かない人を入れない、それが自分の大命題でした。

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